作業療法に魅せられたOTの雑感を綴ります。クライアントとの協業の軌跡をまとめるため・・・自己の客観視と反省のため・・・自分の考えを文章化するエクササイズとして・・・様々な理由で日々の作業を綴っています。
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    その人らしさの抑制
    2010-08-26 Thu 00:23
    僕はナースステーションでカルテを書いている。



    僕は自分が誰だか知っている。

    自分の仕事とキャリアと立場を知っている。

    昨日何があったか、明日何があるのかを知っている。

    今何をしなければならないか・何をしたいかを知っている。

    次になにをするべきかを知っている。

    自分の時間を埋める価値ある作業があることを知っている。

    やりたくない作業もあるが、いずれ片付くことを知っている。

    ここがどこなのかを知っている。

    どうやってここに来たのか、どうやって帰るのか、
    いつ帰るのかを知っている。

    今が何時なのかも知っている。

    車がどこに停めてあるのかを知っている。

    駐車場までどうやって行くのかを知っている。

    車の鍵がどこにあるのかを知っている。

    妻と子供が安全な場所にいることを知っている。

    どこにいるのかを知っている。

    何をしているのかを知っている。

    あとどのくらい時間が過ぎれば会えるのかを知っている。

    両親がどこにいるのかを知っている。

    元気でいることを知っている。

    今日晩御飯が用意されていることを知っている。

    もしも用意されていなくても自分で用意できることを知っている。

    買うこともできることを知っている。

    お金をいくら持っているのかも知っている。

    財布の場所も知っている。

    休息する場所があることを知っている。

    周りにいる人が誰かを知っている。

    自分に危害を加えないことを知っている。

    身のまわりのことは全て自分でできる。

    できないことも解決手段を知っているし、
    今知らなくても考えることができる。




    だから僕は僕でカルテを書いている・・・書けている。




    突然動き出そうとするクライアントに

    何て声をかけられる・・・

    理由をどれだけ妥当性をもって予測できる・・・

    人生の価値と安心とその人らしさをどれだけ取り戻せる・・・




    隣りにいる人は、ただ静かに車椅子に座っているかもしれないが・・・




    目が覚めると突然異国の人ごみの中に立っていた。

    誰も言葉が通じない。

    私が赤に見えるものを周りのみんなは当然のように青という。

    周りの人間が敵か味方かも分からない。




    そんな耐え難い・理解の範疇を超えた世界の中で戸惑い・震える存在なのかもしれない・・・




    人権擁護とはベッド柵の数を減らすことではない・・・

    安全ベルトの装着時間を減らすことではない・・・





    “その人らしさ”に対する抑制を排除したい。



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    作業療法士だから・・・
    2010-08-17 Tue 23:09
    80歳女性・認知症・多発性脳梗塞のTさん

    歌が大好きな彼女。

    長年コーラスに所属してきたという・・・

    昔から歌が大好きだったこと・・・

    母親がいつも家事をしながら歌を口ずさんでいた思い出・・・

    色々なことを彼女は話してくれた。




    今日は初めてのOT介入

    唱歌の歌本を見ながら

    二人で約10曲歌った。




    二人ともうろ覚えの歌については

    ユーチューブで昔の音源を聞きながら

    昔の酷い音源に笑いながら歌った。




    実はTさんは去年もウチの回復期病棟に入院していた・・・



    今回は再発での再入院。



    細かい記憶はかなり曖昧だったが、作業療法室のことは

    克明に記憶していた。




    病棟への帰り道、彼女が私に質問した・・・




    「前入院したときから聞きたかったんですけど・・・
    どのような考えなんですか?」


    「えっ!」


    「私は人間仕事が無いことが一番苦しいことだと思うの。
    入院していると、食事や運動以外はいつもベッドの上で
    しょう。つまらなくて苦しくて気がおかしくなりそう
    だったの。でも大好きなことができる時間があるって
    凄いことだと思うの。この病院の思想にとても興味が
    あるのよ。」



    「そうですか、有難うございます。思想などという立派なもの
    ではありませんが、私達は人間を内臓や骨の集まりと考えるのでは
    なく、仕事(作業)の集合がその個人であると考えているんです。
    だから好きな仕事・やりたい仕事・やらなくちゃいけない仕事などを
    なるべく皆さんと一緒にやりたいんです。」



    「あの部屋があるから私はなんとか入院生活が続けていられるのよ。
    本当に今日はどうも有難う。」




    「こちらこそ有難うございました。また一緒に歌を歌いましょう」




    そんな会話をしながら居室へと向かった・・・




    今日は病前の作業遂行文脈の確認と作業選択、

    歌とADLチェック、そして時間の見当識が低下した彼女が

    ゴミ出しなどの曜日確認やスケジュール管理を兼ねて

    毎日欠かさず読んでいた新聞の手配をして介入を終了した。




    約1時間半彼女と共に過ごしたのだが・・・




    彼女は一度も麻痺した手足を直せと言わなかった・・・




    彼女は一度も腕を揉めと言わなかった・・・




    彼女はいつも価値ある作業を見つめていた・・・




    なかなか彼女のように、自己の価値ある作業を見つめることは

    難しいのかもしれない・・・







    でも・・・







    全てのクライアントが自分の価値ある作業を見つめ健康を取り戻してほしい・・・




    理想と現実の間には距離があるのかもしれないが・・・




    いつも理想を語っていよう・・・・




    歩は決して早くはないけれど・・・・




    そしてその理想に向かって一歩ずつ進もう・・・










    作業療法士だから・・・



















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    今日の介入内容は明日のクライアントの過去だ
    2010-08-12 Thu 22:00
    将来のビジョンとは何だろう?



    僕は作業療法士として

    夫として

    父として

    息子として

    色々な文脈下での将来のビジョンを持っているが・・・



    そんなに具体的でもないような気がする・・・




    当然全ての文脈において肯定的で発展的なビジョンはもっているが

    あくまでもイメージのレベルだ。




    だからといって将来が不安なわけではない・・・




    もちろんいつ予想外の事が起こるかもしれないという

    偶有性の魅力と残酷さは理解している・・・




    明日どうなるか分からない自分の人生を

    どうして不安なく継続できるのだろう?




    それは間違いなく過去の作業経験とそこから生まれる肯定的未来との

    統合による“今”があるからだ。

    その“今”をとどまることなく更新し続けているからこそ

    遇有性の大海原の中、人間は肯定的観測を持つことができる。




    入院という本来の遂行文脈から切り離されたクライアントの

    持つべき将来のビジョンとは・・・

    これから戻るであろう自己の作業遂行文脈に復帰するためのビジョンだ。




    決して10年後、20年後のビジョンじゃない・・・・




    自分の戻るべき環境下で、作業同一性と作業有能性の再構築を

    図れるかどうかの確証もないクライアント達が

    そんな未来をイメージできるわけがないだろう!

    仮にビジョンを持ったとして、それが肯定的思考の元に

    生まれるビジョンであるわけがないだろう!




    色々なことを想定して備えることは必要だが・・・




    未来は過去にある!

    未来の“壁”は過去の“助走”で越えられる!

    助走次第で壁は挑戦にもなるし、障害にも絶望にもなる!

    クライアントの未来に待ち構える壁を越えられるだけの

    助走を一緒にしたのか?

    発症してから“今”までの期間だって“過去”だ!

    しかも全てを崩壊させるかもしれない負のエネルギーを

    諸刃に備えた“過去”だ!


    俺達がクライアントとできる助走ってなんだ?

    作業に決まってるだろう!




    クライアントが自己の作業遂行文脈の中で

    しっかりと“今”を定位できるかどうかをまず優先しなくてはいけない!




    あらゆる感情と価値ある作業を共有しなければいけない!



    一緒に悩み一緒に作業し一緒に楽しみ一緒に未来を向け!



    明日にドキドキする“今”を奪われたクライアントの



    “今”を作れない奴が



    クライアントの遠い未来なんか偉そうに語るな!




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    環境設定の再考
    2010-08-12 Thu 00:38
    自分の価値ある作業を客観視することは非常に困難だ・・・

    その中で遂行していく作業を決定していくことは至難の技だ・・・

    セラピストのテクニックも勿論必要だが

    それでも作業決定に至らない場合はある・・・




    機能回復に固執するあまり
    自己の作業遂行文脈を想起できない・・・

    失語など意思疎通の問題がある・・・

    クライアント本人も気づかない
    防衛規制が次の一歩を妨げている・・・

    認知機能の低下から価値ある作業を
    客観性をもって見つめられない・・・

    色々な理由があるだろう・・・・




    どのような作業をしていたか・・・
    何故その作業をしていたのか・・・
    その作業を通してどのような肯定的体験と感情があったか・・・

    いつもこのような階層的コミュニケーションで
    クライアントと作業共有をしている・・・




    作業項目の抽出のみに焦点を当てると
    仮にその作業を再び遂行することが困難な場合
    意味や価値を具現化する可能性の模索が混迷を極める・・・

    何故その作業に価値を置いていたのか・・・

    聴取や観察やなどから
    クライアントに必要な文脈を模索していくことも必要だ・・・

    作業選択が全く困難なクライアントについても

    そのクライアントがイキイキとした表情を見せる
    環境や文脈を大切に捉え、今後もその環境を提供することは可能だ・・・

    作業療法は協業が前提であることに異論は無い・・・

    しかし、協業体制をとれないクライアントが沢山いることも
    疑いの無い事実だ・・・

    意志にも、習慣にも、遂行にも効果的な直接介入ができなくても・・・

    環境を変えることはできる・・・







    環境設定という言葉を見つめなおしたい・・・







    物理的環境の改善や福祉用具の使用のみを指すのではなく・・・

    クライアントがイキイキした表情を見せる環境とは何か?

    これを含めて調整を行いたい・・・
    申し送りたい・・・・

    人間は生きていると同時に

    生かされている・・・・

    主体的な作業遂行文脈にも

    本人の意志が介在しえない
    環境因子が多数存在し・・・


    主体性とは無数の環境ありきで存在しえるというスタンスを認めなければ・・・

    人間を理解はできない・・・

    価値ある作業を提供することも作業療法だが、

    価値ある作業を遂行できるかもしれない
    環境を提供することも・・・




    作業療法といってはいけないだろうか?





    だって作業療法の目標は、自分の生活に戻った先の
    クライアントの幸せなのだから・・・
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    FISCOでの再会へ向けて・・・
    2010-08-09 Mon 23:10
    30年間郵便局に勤務してきたWさん

    数年前に自主退職し

    貯金や退職金で今まで計画的に生活してきた・・・




    そして今回の発症・・・




    他県で独居生活してきた彼は、再び自宅での独居を希望した。

    義務作業と殆ど無縁な生活をしてきた彼だが、

    決して無為な生活をしてきたわけじゃない・・・




    日曜大工や自転車(ロードバイク)

    RCカーやテレビゲームなど

    自分の趣味の時間を上手く持ち

    比較的規律正しい生活を送ってきた。




    ADLは早期に自立し、独居生活を送る社会生活技能も

    早期に実用レベルにまで回復したが、

    またあの日のような願望作業への情熱を取り戻せるのか不安だった・・・




    もう何もできないかもしれない・・・

    そんな表出が目立ち、本人の意志を伴った
    作業共有は殆どできなかった・・・








    彼とは色々な遊びを共にした。




    色々な話をしながら一緒にプランを練った。




    ペーパークラフトを一緒に作成し、動画を撮影し

    ユーチューブにアップしたり・・・




    7月24日の世界的イベント、life in a day に共同参加したり・・・




    周りの目を気にしながら、地下駐車場で自慢のRCカーを走らせたり・・・




    その中で色々な工夫があり、笑顔があり、遂行があった。




    そして退院・・・




    彼とはお互い大好きなレースゲームで

    オンライン対戦することを約束して別れた・・・




    対戦の約束の時、彼が言った・・・




    「手がもう少し動くまで対戦は待ってほしい」




    「確かに気持ちは分かります、でも自分が好きなことは
    手の動きに関係なく続けてほしいなという気持ちはあります」





    「違うんです・・・ だって・・・  勝ちたいから・・・  」




    一緒に笑った。




    そして数日後の今日、彼からメールが来た。




    メールには入院リハのお礼と共に

    本日の富士スピードウェイ(FISCO)のベストタイムと

    オンライン世界ランキングが添えられていた。




    もう走りこんでいるらしい・・・




    マジ負けそうだからこれから僕も走ろう!




    みんな寝静まったら・・・

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